起きて、遊んで　食べて、寝て。
泣いて、笑って、怒って。そうして毎日生きて、生きて…
　あの頃の君には、まだ僕のことが見えていたね。舌足らずな言葉でよく話し掛け
てくれた。周りの大人達はまだ日本語ぢゃないって笑っていたけど、僕にはちゃん
と伝わっていたよ。君が毎日を無心に、でも精一杯生きているって、だから僕には
分かってた。今日は何をしようなんて考えなくても、君が一瞬一瞬をあんなに楽し
く過ごしていたことを僕は知ってる。
　ホントは人生の目標なんて大義名分がなくても、人は生きていけるんだって君は
ちゃんと知っているんだ。両親に愛されていること、僕が見つめていることを感じ
ることができた頃の君は、 一人ぢゃないって本能的に分かってた。
　天使感知器官の使命は、人の本能にそれを刻むことなんだ。僕の姿が光の残像の
ようにしか見えなくなって、いつしか完全に見えなくなるころ、役目を終えた天使
感知器官は静かにその活動を停止する。それはとても自然で、君が気付くことはな
い。君は視野を世界へ広げ、自分の足で歩くようになるんだ。
　たとえ君が僕を忘れても、僕は君を忘れないよ。
　天使が祝福した子供を忘れるわけがないんだから。いつだって君のことを見てる。
　どんな苦境や困難に陥っても、君が本能に刻んだ『想い』を忘れないように。
　君が君であることをあきらめないために。

　君が君でありさえすれば、大丈夫。生きていける。
　生きてさえいれば、変化は必ず訪れるものだ。
　すべては、君が生きていること。それが、基本。

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